
Aちゃんの件をなんとなく自己分析できたところで、今度は編集者にいわれた別の言葉が気になった。
「だって仲西さん、ロリコンなんでしょ?」についてである。
童顔の女が好きで、貧乳が好きで、セーラー服が好きで、パンツは白か水色が好きだという自分の趣味をしょっちゅう口にしているため、僕はロリコンだと断定されることが多い。だが、僕のような人間のことをロリコンと呼ぶのはちょっと違う気がする。
自分のことをロリコンだと思っていた時期も確かにあった。しかし、仕事でロリコンについて研究する度に、ロリコンを名乗れるレベルにまったく達していないことを実感してきた。本物のロリコンというのは、こんな生やさしいものじゃない。
ロリコンではない僕から見れば、彼らは本当に恵まれない境遇に置かれている。願望のほぼすべてが、その実現性を法律によって打ち消され、しかも性行為を抜きにした恋愛関係だって社会的にはほぼ許されていない。大人の女性を好む男性の中にもチャンスに恵まれない人はいるが、将来に希望を持つことはできる。ロリコンの男性はそれをほとんど持てないばかりか、かろうじて繋ぎ止めている望みさえ、自分が歳を取る毎に失われていく。
ロリータ・コンプレックスは、人間が抱くさまざまな種類の性欲の中でもっとも絶望感が高いもののひとつだろう。この時代、この社会で、ロリコンとして生きることを選択をせざるを得ない彼らにとって、オナニーの重要度は相当に高いものになっているはずだ。
僕が今まで会ったことのあるロリコン男性の中で、自らの性癖について一番真剣に考えていたのが、福岡に住む大学院生、二階堂さん(仮名・24歳)である。以前は雑誌のちょっとした記事で取材をさせてもらっただけだが、ロリコンとしてのつらさや悲しさ、あるいは喜びや楽しさを、もう一度しっかりと聞いてみたいと考えた。
僕はすっかり、オナニーの考察に本腰を入れる踏ん切りがついていた。あのカップルのせいで、とうとう飛行機で福岡に飛ぶのにも躊躇しなくなった。
○月×日、福岡の天神で二階堂さんと面会。


――二階堂さんは、ロリコンであることを周りにカミングアウトしてますか?
「必死で隠してるわけでもないけど・・・・・・正直、あまりバレたくないですよね(笑)」
――バレてしまった経験は?
「ハッキリとバレたことはないけど、おっぱいが小さい女性が好きだということを、大学の飲み会でうっかり話したことがあるんですよ。そしたら、先輩たちにむちゃくちゃヘンな顔されました」
――僕もあります。Aカップが好きと口にしただけで、冷たい目で見られたことが。
「まったく理解できないとまでいわれました。巨乳好きが多数派なのは分かりますけど、自分と価値観が違う人を軽蔑するようことは止めてほしいですよね」
――それも彼らの自己アピールのひとつなのかもしれません。「俺は犯罪者になるような人間じゃない」っていうのを周囲に訴える手段というか。
「確かにそんな感じはしますね。人を貶めて自分を守るっていうのはどうかと思いますけどね」
――ただ、そうでなくとも、貧乳の良さはなかなか共感してもらいにくい。
「そうですね。僕にしてみれば不思議でしょうがない。小さい方がずっと美しいと思うのに」
――二階堂さんの理想って、どんなおっぱいですか?
「ちょっと膨らんでいるんだけど、ブラジャーが必要ないくらいの大きさがベストです。ロリコンにもいろいろあって、膨らみかけが好きな人もいれば、真っ平らの胸が好きな人もいるし、胸よりもお腹がポッコリ出てる幼児体型じゃないとダメっていう人もいる」
――でも、少女ってものすごいスピードで体型が変わりますよね。
「うん、すごく儚い。その状態でキープしてくれよって思います」
――最高の状態で時間が止まってほしい、と。
「止まってくれたら最高ですね。僕、ロリコンが集まる掲示板やチャットでたくさんの人と話をしてるんですけど、ロリコンって少女の成長後に対してまったく期待してないんですよ」
――ほんの少しもですか?
「うん、完全に期待してない。あと、かなり年齢にうるさいですね。『8歳が最高だ!』とか、『11歳じゃないとダメだ!』とか、そうやって本当に細かくこだわるのがロリコンなんです」
僕が自分のことをロリコンではないと考える理由のひとつがこれだ。ストライクゾーンを強いて提示するなら高校生から20代中盤あたりまでになるが、強くこだわっているわけでもない。童顔で貧乳でセーラー服が似合うような女性なら、実年齢はあまり気にしない。具体的に挙げれば、二宮沙樹の大ファンである。


――二階堂さんは、ロリ系のAVを観たりします?
「観ないことはないですけど、18歳以上の女優をロリ系って呼ぶことに、僕はなんか腹が立つんですよね。たまにAVを借りるときは、なるべく貧乳で背の低い女優を選ぶようにしてますけど、同じ身長でも少女たちの体重はもっと軽いし、体脂肪ももっと少ない。大人の女性がいくら痩せても、少女のような体つきになれるはずがないんですよ。お尻とかふくらはぎの適度なハリも、少女特有のものです。ロリ系女優を少女と見なしてオナニーするには、かなり無理がある」
――ふくらはぎのハリの違いなんて、僕には見分けがつきません。
「全然違いますよ。中学生と高校生を比べてみたって全然違う」
――よく周りからロリコンっていわれるんですけど、その話を聞くだけで、僕は違うんだって分かります。
「そうでしょうね。一般世間から見れば仲西さんもロリコンに含まれるのかもしれないけど、とりあえず僕らとはものすごく距離がある。ロリコンにとって、大人の女性の魅力と少女の魅力はまったく違うものです。大人の女性に魅力があることはちゃんと分かっていますし、僕も男ですからそういうAVに興奮しないわけじゃないです。だけど、ロリコンとしての性欲とは完全に別物」
――二階堂さんは、ロリコンの定義について考えたことがありますか?
「中学生までの女の子を少女と見なして、高校生以上の女性と区別している人じゃなければロリコン失格だと思ってます」
――ずいぶん明確なんですね。
「僕なりの基準なので、他人に押しつけようとは思ってませんよ。だけど、今までに多くのロリコンさんと接してきて、かなり正解に近いんだろうなとは思ってます。一口に少女といっても、それぞれの世代ごとに違う魅力があるんですよ。その違いが分からずにまとめて好きだっていう人にも、ロリコンとは名乗ってほしくない。成長した分だけ少女の魅力は変化するし、成長をたくさん重ねれば少女としての美しさは必ず損なわれるんです。おっぱいの大きさなんて顕著でしょう?」
――でも、ロリコンの中には、巨乳を好む人もいるんじゃないですか?
「僕とは違うタイプのロリコンですね。彼らは、逆方向から少女らしさを追求しているんだと思います。少女と巨乳の組み合わせはすごくアンバランスですけど、アンバランスだからこそ、そこに少女がいる実感が強まるっていう」

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